「障害者差別解消法」について考える

2017年7月8日(土)に行われたサークル例会の勉強会で使われた資料内容です。

(1)難聴者への問いかけ(健聴者にも考えてほしいこと)

 Q1.難聴という障害を受けて 生活の中で、差別的な扱いを受けたと

    感じたことはありますか

 Q2.差別的な扱いは、どうして発生したのか分かりますか?

  Q3.障害に対する理解と配慮があれば生活がしやすくなると感じますか?

 

昨年、2016年4月に障害者差別解消法が施行された。

これは、社会が障害者をより理解し、合理的な配慮をすることを求める法律。

【重要ポイント】単なる配慮でなく、「合理的な」としたことに重要な意味がある。

「合理的な配慮」 ==> 的外れでない、的確な、実効性のある配慮

  そのためには、

障害者と社会(事業者)が、話し合いによる相互理解をして、

配慮内容を決めていくことが必要。

「合理的な配慮」と「差別」の関係:

     「合理的な配慮」を拒否すること ==> 障害者への差別と断定

どうして、そう考えるのか?

 「障害」は、当事者側だけの問題でなく、

  社会側の仕組みの問題つまり「社会的障壁」が原因ととらえる。 

 「社会的障壁」・・・ 事物(建物施設など)、制度、慣行、一般観念など

              様々な社会環境での不都合

          障害者(少数者)への無理解、無配慮が根底にある

事例1:

  大ホールでの講演会で、講演者はマイクを使って話していたが、

  機材が故障してマイクからの音声が聞こえなくなった場合、

  これは健聴の参加者には「障害」となる。 

  難聴者には、要約筆記などの情報保障がないことは、

  同様に「障害」のはず。

事例2:

  ろう者の集まる会合に、少数の健聴者が参加した。

  手話を解しない健聴者は、手話読み取り通訳がないと、

  話し合いの内容が理解できない。

  健聴者が逆の立場で「障害者」となる。

 

  「合理的な配慮」を無視される 

            ==> 「社会的障壁」が放置される 

                             ==> 差別ととらえる

 「障害」の表記に関すること:

 「障害者」を「障がい者」と「害」を平仮名にする意見があり、

 実際に行政機関でも一部使われてもいるが、

 「害」のイメージの悪さを、当事者に帰属するものという

 「医学モデル」からとらえている。

    「障害」を社会から受けているという「社会モデル」では、

    まずは「合理的配慮」を推進すべき

 

障害者人権の経過概要

 A.アメリカでの障害者の人権運動

  合理的配慮、障害者差別禁止

 B.国連障害者権利条約

  障害者差別を禁止する実効的な国際条約

 C.日本の障害者政策の展開

   既存の法律に無かった「合理的配慮」の推進を立法化

    障害者差別解消法の施行

 

)アメリカの動向

 A. リハビリテーション法(1973年)

  ア.連邦政府関係機関での障害者差別禁止

  イ.「合理的配慮」を政府機関に義務付ける

 B. ADA法「障害をもつアメリカ人法」(1990年)

  ア.「合理的配慮」の義務を一般事業者にも拡大

  イ.障害の医学モデルから社会モデルへの転換

    社会福祉法から公民権法へ

  ウ.国際的な広がりへ

 包括的な障害者差別禁止法をもつ国が増える

オーストリア、カナダ、ニュージーランド、フィリンピン、イギリスなど)。

国連障害者権利条約制定にも影響

 

)国連障害者権利条約

 A.2001年より条約制定の特別委員会(アドホック委員会)を開催

 B.2006年採択、2008年発効、2014年日本批准140番目)

   ※2016年現在172か国が批准

    ただしアメリカは国際的制約を嫌う反対があり未批准

 C.福祉法制でなく、人権法制として、

 D.「障害」は個人ではなく、社会にあるの視点

 E.「われわれのことを我々ぬきで勝手にきめるな」のスローガン

   障害者の視点でつくられた条約

 F.「障害に基づく差別」、「合理的配慮」の定義を記載

  ア. 差別禁止への実効性のある施策を義務付ける 

       ==>  「合理的配慮」の否定を「差別」と判断する

  イ. 国内人権機関による監視 

  ウ. 国連への定期的な施策報告義務

 

)合理的配慮

 (権利条約の第2条定義に記載)

  「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として

  全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使ることを確保するための

  必要かつ適当な変更及び調整であって、

  特定の場合において必要とされるものであり、

  かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

   意味内容を要約すると:

    1.障害者への平等実現のための調整配慮・・・基本的人権

    2.必要とされる適切な個別の対応・・・多様性(個人的、場面環境)

    3.過度の負担とならないもの・・・全体的なバランス(事業環境への影響)

  「合理的」とは、2,3について、当事者と受入れ事業者とが、

  話し合いによる相互理解に基づいて、配慮内容を決めることが基本。

   両者で決着がつかない場合は、各相談窓口へ

 

)日本における障害者権利条約を批准するための法整備

 A.障害者基本法の一部改正(2011年)

  ア. 障害者の定義の拡大(第2条 定義 社会的障壁を明記

  イ. 合理的配慮概念の導入(第4条 差別の禁止)

  「障害」の「医学モデル」から「社会モデル」への転換を反映した改正

 

 B.障害者差別解消法(2016年4月施行)

  障害者の人権擁護のための「合理的配慮」の推進

   ア.国・地方公共団体

      ・・・障害を理由とする不当な差別の禁止、合理的な配慮の義務

   イ.事業者(営利・非営利問わず)

      ・・・障害を理由とする不当な差別の禁止、合理的な配慮の努力義務

   ウ.差別解消のための相談支援の充実や啓発活動

  障害者雇用に関しては・・・

    障害者雇用促進法一部改正(2016年4月施行)で

     障害者に対する差別禁止と合理的配慮の提供義務を制定

 

)内閣府HP 合理的配慮等具体例データ集より

  ここでは、以下サイトの内容を抜粋して記載

   「内閣府 合理的配慮等具体例データ集」サイト

  

)障害者差別に対する相談窓口

 A.県・各市町の福祉課

   浜松市: 健康福祉部 障害保健福祉課

       TEL:053-457-0234  FAX:053-457-2630 

   静岡県: 健康福祉部 障害者政策課

       TEL:054-221-2352  FAX:054-221-3267

 B.差別解消推進のための地域ネットワーク

  障害者差別解消支援地域協議会(県、市町)

   ※これは直接的な相談窓口ではないが、差別問題解決のための機関

    浜松市: 浜松市障害者施策推進協議会

    静岡県: 静岡県障害者差別解消支援地域協議会

 

)聴覚障害者の場合

  A.事例集   

     ==> 合理的配慮の提供の事例を参照  

   B.サークルの難聴者会員の意見収集

     ==> 「あすなろ」難聴会員の意見を参照

 

(10)総括

障害者差別解消法を有効に機能させるには、

「合理的配慮」の社会啓発が重要で、

障害者への権利意識を高めていく必要がある。