差別はどうして起こるのか?

2019年2月9日(土)に行われた例会の勉強会でテーマとして取り上げたもの。以下はその時に配布した資料内容です。

(1)参加者への質問

   Q1. 自分がある人(たち)から差別されていると感じた経験

   Q2. 自分がある人(たち)を差別していると意識した経験

   はあるか?

 

(2)「差別」とは?

  生物に元々そなわる認識の働き(区別)から習慣化された行動の

 1つ。

  言葉として、「区別」と「差別」の関係は曖昧だが、

  「区別」は認識一般をさし、「差別」はそれを一定の行動で示す

 状態。

  対象物が好ましいか、好ましくないかを判別し、適応する行動を

 とる。

 

(3)「差別」の事例

  ア.草食動物が、ある種類の草を好んで食べる。

   (視覚、匂い、味などで判断)

  イ.人間にも、人により好みは様々。

    甘党、辛党、肉好き、人参嫌いなど。

  ウ.別の巣のアリ同士は敵対し、集団で攻撃行動もする。

  エ.ミカンなどの果物でも、出来により等級化され、

    値段も異なる。

  オ.地域の特産品でも、何かの特性を強調して、

    差別化されたものを売り出す。

 

  この様に、「差別」は、生物一般、人間社会でも、

 常に行われる現象。

 

(4)社会問題とされる「差別」

  人間社会の中での、人間間の「差別」が、

 近代になって問題提起される。

  特に第二次世界大戦後に、「自由と平等」を訴え、

 民主主義的な社会構築の中で、差別解消の運動となって現れてきた。

 

  「差別する者」と「差別される者」との闘争の歴史として

 現在進行形で進んできている。

  代表的な階級闘争の歴史として、18世紀後半のフランス革命があ 

 る。

  絶対王政への反乱として始まり、運動の中で、

 「自由、平等、友愛」が、スローガンに掲げられた。

 

(5)人間社会における「差別」の構造

  「差別」は個人にさまざまな形で形成される。

  (好み、習慣、経験)

  それが、一部の強者の意思を追随する形で、集団間に差別が伝搬

 して、固定化することがある。

  または、同じ「差別」をする者同士が多数者となって協同し、

 少数者を阻害することもある。

 

(6)「差別」の構造的問題点

 ア.差別は強者、多数者によって有利に続行されるので、

  それを回復させるのには、何らかの知恵と努力が必要で、

  時間とエネルギーがかかる。

 イ.差別が放置され、長い期間行われていると、

  「差別する側」も「差別される側」も、

  「差別」の意識が薄れ、不当だとは感じなくなる。

    例:日本における、戦前の男女差別など

 ウ.「差別」は人間社会が複雑化することにより

  新たな「差別」が発生する可能性がある。

  (原始的な未開社会では、階級的差別は無く、

   平等を自然に重んじていた)

 エ.社会が不安定化すると、「差別」の意識が強調され、

  いままで融和していた人間同士が対立して、

  紛争になることもある。

    例:戦前のドイツのヒトラー政権でのユダヤ人虐殺や、

     日本での朝鮮人への差別・虐待

     (関東大震災での虐殺事件など)

     戦中、日本では、「鬼畜米英」と敵国を憎む風潮であった。

 オ.社会制度改革で、差別対象者への優遇措置が強化されると、

  その反動として、それを逆差別だと訴える運動が出てくることも

  ある。

 カ.もともと「差別」の判断は主観的で相対的。

  その調整は厳密には難しい場合がある。

 キ.複雑な社会では、「差別される者」が、

  別の立場では、「差別する者」となることもある。

  (被害者が別の状況で加害者になる)

 ク.人は自らの拠り所(アイデンティティ)を明確にするために、

  あえて他者を形成して、差別化し、対立する傾向がある。

  (自分たち、仲間意識、地方、国、特定グループの応援)

 ケ.差別する側の無意識。

   差別される側は不当な不利益を被っているが、

  差別する側は、その意識を感じていない傾向がある。

   例:合理的配慮の欠如による、障害者の差別問題

    これは、一般に、多数者(強者)と少数者(弱者)の問題

   でもある。

    最近増加傾向のDV(配偶者暴力)や子供への虐待なども、

   その一つ。

 コ.複雑な社会では、元々差別化により、社会を動かしているのが

  実態であり、これを、不当か、正当かの判断は、

  相対的なものとなり、時の議論により流動する。

   例:選挙区における一票の格差の問題など

 サ.本来は平等に扱われるべきものが、

  一部の権限で密かに不当差別が行われることがある。

   これが明るみになると、違法の疑いで処罰されることもある。

   例:最近ニュースを賑わした、パワハラ問題や大学入試判定問題

 

(7)まとめ

  「差別」は人間に元々備わった働きであり、

 この性質を自覚しつつ、あらゆる個人を尊重するための、

 自由、平等という尺度を常に検討して、固定化されることなく、

 よりよい社会を形成する努力が欠かせない。